【広島県よろず支援拠点】「困っている企業に、こちらから会いにいく」セカマチを活用した新しい支援のかたち
公開日:2026/09/24

「ホームページからの集客を増やしたい」「新しい商品をつくりたい」「人手不足を何とかしたい」。
経営者が最初に口にする悩みが、その会社の“本当の課題”とは限りません。
広島県よろず支援拠点では、相談者との対話を重ねながら課題を整理し、必要に応じて異なる専門性を持つコーディネーターが連携。経営改善や広報・PR、IT、商品開発、人事・労務など、幅広いテーマについて伴走支援を行っています。
そして現在、これまで接点のなかった事業者とも出会うための新たな入口として活用しているのが、成長加速マッチングサービス、通称「セカマチ」です。
「何を相談したらいいのか、まだ自分でもよく分かっていない」。
そんな段階でも構わないと話す、広島県よろず支援拠点 チーフコーディネーターの落野洋一様に、支援の特徴やセカマチを活用する理由、事業者との向き合い方について伺いました。
インタビュイー紹介
広島県よろず支援拠点 チーフコーディネーター 落野洋一様
広島県よろず支援拠点広島県よろず支援拠点は、中小企業庁が全国47都道府県に設置する無料の経営相談所「よろず支援拠点」の広島県拠点。公益財団法人ひろしま産業振興機構が運営しています。 経営全般をはじめ、IT、集客・PR、ものづくり、海外展開、人事・労務など、さまざまな専門性を持つコーディネーターが在籍。広島市の本部と福山サテライトを中心に、県内事業者の経営課題を幅広く支援しています。
目次
「何を相談すればいいか分からない」からでも大丈夫
――まず、広島県よろず支援拠点について教えてください。
落野様:
よろず支援拠点は、中小企業や小規模事業者の皆様が、経営に関することであれば何度でも無料で相談できる経営相談所です。
広島県では、広島市の本部と福山サテライトを中心に相談を受けています。昨年度も年間6,000件を超える相談がありました。
経営改善だけでなく、広報・PR、IT、商品開発、人事・労務など、本当に幅広い相談があります。これから創業しようとしている方でも相談していただけます。
――相談に来られる時点で、自社の課題を明確に把握している経営者は多いのでしょうか。
落野様:
最初から課題を明確に理解されている方は、感覚としては2割くらいだと思います。
例えば「ホームページから集客したい」「デザインを変えたい」「新規事業を始めたい」という相談で来られる方がいます。
ただ、詳しくお話を聞いていくと、実は本業の収益性や事業構造の部分に課題があることもあります。
新規事業を始めれば解決するように見えても、本業を見直さなければ根本的な改善につながらないこともあります。
だから、入口の相談内容がそのまま本当の課題でなくても構いません。
まず来ていただいて、話を聞きながら私たちと一緒に課題を整理し、事業者さん自身にも「本当に向き合うべきことはここだったんだ」と気づいていただく。それも、私たちの大切な役割だと思っています。
25名の専門家が、一つの経営課題をチームで支える
――幅広い相談に対応できる理由はどこにありますか。
落野様:
広島県のワンストップ相談窓口には、現在25名のコーディネーターがいます。
経営に関する専門家だけでなく、SNSや広報、デザインなど、それぞれ異なる専門分野を持つ人材がいます。
大きな特徴は、一人のコーディネーターだけですべてを解決しようとしないことです。
自分だけでは対応できない課題があれば、別の専門性を持つコーディネーターと連携しながら支援できます。
――例えば、相談の途中で別の課題が見つかることもありますか。
落野様:
もちろんあります。
最初は集客の相談だったとしても、お話を聞いていく中で、価格設定や原価管理、人材、業務効率化など、別の課題が見えてくることがあります。
そうしたときに、「それは専門外なので分かりません」で終わるのではなく、必要な専門家につなぎ、一緒に支援できる。
これは、よろず支援拠点の大きな強みだと思っています。
「相談して終わり」ではなく、その後までフォローする
――ほかの経営相談窓口と比べたときの、よろず支援拠点の特徴は何でしょうか。
落野様:
相談件数自体もかなり多いのですが、単に相談を受けて終わりではなく、その後をフォローするところは大切にしています。
「前回の相談から、その後どうなりましたか」と確認したり、必要であればもう一度相談していただいたりします。
一度アドバイスを聞いただけで、すべてが解決するわけではありませんから。
――経営者自身が動いていくことも重要なのですね。
落野様:
そうですね。
いろいろな専門家から情報を集めること自体は悪いことではありません。ただ、ずっと情報収集だけを続けていても、事業はなかなか前に進みません。
相談した内容を踏まえて、「自分は何を信じて、次に何をするのか」を決めて動いていただくことが大切です。
私たちは、その行動を支えながら、必要なタイミングでまた一緒に考えていく存在でありたいと思っています。
アドバイスだけでなく、「市場で試す場所」までつくる
――広島県よろず支援拠点では、特徴的な取り組みも行われていますね。
落野様:
「実践よろず塾」という取り組みを行っています。
新しい商品やサービスを開発したい方、既存商品の魅力を高めたい方に対して、コーディネーターが個別にアドバイスするだけでなく、実際にお客様の反応を確かめられる「マルシェ」の場も設けています。
――相談室の中だけで支援を完結させないのですね。
落野様:
そうですね。
商品についていくら考えても、実際のお客様がどう感じるかは、売ってみないと分からないことがあります。
そこで、事業者さんにマルシェへ出店していただき、お客様の反応や声を直接確認していただきます。
単年度の成果だけではなく、中長期的に「売れる商品」を生み出していきたいという思いがあります。
また、こうした取り組みを始めたことで、商工会議所など他の支援機関からも「自分たちが支援している事業者を出店させたい」と声をかけていただくようになりました。
支援機関同士の新たな連携にもつながっています。


売上を伸ばすだけではない。現場に入り、生産性向上も支援
――支援の領域はさらに広がっているのでしょうか。
落野様:
今年度から、よろず支援拠点の中に「生産性向上支援センター」ができました。
これまでのワンストップ相談窓口では、売上を伸ばすことや付加価値を高める支援が比較的多かったのですが、生産性向上支援センターでは、現場改善や業務効率化などにも取り組んでいます。
こちらは、専門家が実際に事業者さんの現場へ複数回訪問して支援する仕組みです。
人手不足は、多くの企業に共通する大きな経営課題です。単純に人を増やすだけではなく、業務そのものを見直したり、ITを活用したりすることで生産性を高める。
今後は、そうした支援事例も増やしていきたいと考えています。
「待っているだけでは、出会えない企業がいる」
――その中で、なぜセカマチを活用しようと考えたのでしょうか。
落野様:
一番大きいのは、これまでの方法だけでは、どうしても出会える事業者さんが限られてしまうことです。
金融機関やほかの支援機関から紹介いただいたり、ホームページやSNSで情報発信したりしていますが、どうしても届けられる範囲には限界があります。
広島県内には約7万8,000の中小企業があると言われています。一方で、これまでによろず支援拠点を利用していただいた事業者さんは約1万1,000社であり、約14%しかいないのが実情です。
「本当は困っているけれど、よろず支援拠点を知らない」という方も、まだまだいると思っています。
――つまり、相談が来るのを待つだけではなく、こちらから出会いにいく必要があると。
落野様:
そうですね。
セカマチには、私たちがこれまで相談を受けたことのない企業も登録されています。
しかも、自社の事業内容や挑戦したいこと、抱えている課題を書いてくださっています。
そこをコーディネーターが確認して、「自分の専門性ならお手伝いできそうだ」と思った事業者さんへ、こちらからコンタクトできる。
新しい事業者さんと出会うための入口として、大きな可能性を感じています。
普段出会いにくい企業とも、課題を起点につながれる
――セカマチだからこそ出会えている事業者もいますか。
落野様:
あります。
広島県よろず支援拠点を普段利用される方は、小規模事業者の割合がかなり高いのですが、セカマチには従業員が50名以上いる企業など、比較的規模の大きな企業も登録されています。
そうした企業とは、従来の相談窓口だけではなかなか接点を持てないことがあります。
セカマチで挑戦課題が見えることで、「この会社のこの課題なら支援できるかもしれない」と具体的に考えられるようになります。
現在は複数のコーディネーターがそれぞれログインし、自分の専門分野と合う課題を探しながらコンタクトしています。
活用はまだ始まったばかりですが、これまで接点のなかった企業と出会えること自体に価値があると感じています。
挑戦課題は、具体的に書くほど「支援したい人」に届きやすくなる
――事業者がセカマチへ挑戦課題を書く際、意識してほしいことはありますか。
落野様:
できれば、具体的に書いていただけるとありがたいですね。
一行、二行だけの内容よりも、現在どんな事業をしていて、何を目指していて、その中で何に困っているのかが分かると、こちらも支援のイメージを持ちやすくなります。
実際に課題を詳しく書かれている企業を見ると、「こういう思いを持って取り組んでいるんだな」と伝わってきます。
そうすると、こちらも「ぜひ一度話を聞いてみたい」と思います。
――完璧に課題を整理してから書く必要はないのでしょうか。
落野様:
そこまで整理できていなくても大丈夫です。
先ほどお話しした通り、最初から本当の課題を明確に理解している方ばかりではありません。
「こういうことに困っている」「こうなりたい」ということを書いていただければ、実際の面談の中で一緒に整理していくことができます。
だからこそ、まずは課題や思いを表に出していただくことが、支援者との出会いにつながると思います。
オンラインで見つけ、対話によって信頼関係をつくる
――広島県では、対面で相談したいという事業者も多いと伺いました。
落野様:
そうですね。
オンライン相談も行っていますが、広島では最初は一度顔を合わせて話したいという方が比較的多いです。
一度会って信頼関係ができれば、その後はオンラインでも進めやすくなります。
――セカマチも、オンラインだけで完結するものではないということでしょうか。
落野様:
そう思います。
セカマチは、まずお互いを知るきっかけをつくるものです。
オンライン上で事業内容や課題を知り、「一度話してみよう」と思う。そこから実際に対話して、相手の考えや状況を知っていく。
最終的には、オンラインの出会いが、そうした人と人との交流につながっていくことが大切だと思っています。
今後、各地域でセカマチをきっかけに生まれた具体的な支援事例が増えていけば、事業者さんにとっても「こんな支援者と、こんな関係をつくれるんだ」とイメージしやすくなるのではないでしょうか。
「ここまで相談していいのかな」と思わず、まず話してほしい
――最後に、セカマチを利用している事業者の皆様へメッセージをお願いします。
落野様:
「よろず支援拠点」という名前を聞くと、公的な機関なので、「こんなことまで相談していいのかな」「少し敷居が高そうだな」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、決してそんな場所ではありません。
本当にちょっとした悩みからでも構いませんし、自分自身で課題を整理しきれていなくても大丈夫です。
事業者さんが、今よりもう一段成長していくために、私たちがお手伝いできることがあれば、一緒に考えていきたいと思っています。
そして、セカマチを通じてこちらからコンタクトをお送りしたときには、「何か売り込まれるのではないか」と構えずに、まず一度お話ししていただけたら嬉しいですね。
話してみることで、自分では気づかなかった課題や、新しい選択肢が見つかるかもしれません。
支援者と出会うことを、次の一歩を考えるきっかけとして、ぜひうまく活用していただきたいと思っています。
成長加速マッチングサービス「セカマチ」とは
成長加速マッチングサービス、通称「セカマチ」は、新たな挑戦や成長を目指す事業者と、その課題を支援できる金融機関や認定支援機関などをつなぐオンラインのマッチングサービスです。
事業者が、自社の事業内容や「資金調達」「事業承継」「経営相談」などの挑戦課題を登録すると、その内容を見た支援者から面談の申し出(コンタクト)を受けることができます。
今回、広島県よろず支援拠点がセカマチに感じている価値は、これまで相談窓口だけでは出会えなかった事業者の課題を知り、支援者側から声をかけられることにあります。
経営課題は、最初からきれいに整理されている必要はありません。
「何かを変えたい」「次に進みたい」という思いを外へ出すことで、その課題に応えられる専門家との新しい対話が始まる可能性があります。
サービスの役立つポイント
事業者に役立つポイント
●取り組みたいテーマ(挑戦課題)に対して、解決可能な支援者から直接コンタクトを受けられる
●金融機関、投資機関、認定経営革新等支援機関など、国が認めた支援機関のみが登録しているため安心
●情報公開する支援者の範囲を選べるため、希望する支援者に限定してアプローチを受けられる。
支援者に役立つポイント
●中小企業庁の運営するサービスで安心
●約50,000社の事業者が登録しており、無料でコンタクト可能
●事業者の財務データや基本情報に加え、事業者の取り組みたいテーマ(挑戦課題)の具体的な内容を確認できる
●市区町村レベルでの事業者検索や、事業者が取り組みたいテーマ(挑戦課題)の種類(資金調達/事業承継/経営相談)の検索が可能で、自身の専門性に合った事業者に出会える

記事をシェア
まずはサービスを
利用してみませんか?
※会員登録には、GビズIDが必要です。