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成長加速マッチングサービスがつないだ、企業の成長を支える“予防法務”との出会い

事業者・支援者インタビュー

公開日:2026/09/16

中越経営法律事務所 代表弁護士 中越 琢人 様と株式会社エムズ 代表取締役 荻野 光教 様

会社が成長すると、それまで経営者一人の経験や判断で乗り越えてきたことが、少しずつ「仕組み」の問題へと変わっていきます。取引先が増える。社員が増える。扱う仕事の規模が大きくなる。新しい事業にも挑戦する。
その変化の中で、契約や法務もまた、いつの間にか「必要になった時だけ対応するもの」では済まなくなっていきます。今回ご紹介する株式会社エムズも、まさにそうした成長の途中にある企業です。
看板・サインの製作施工を中心に事業を育て、現在ではテーマパークや商業施設のイルミネーション施工などにも領域を拡大。一方で、社員や大手企業との取引が増えるにつれ、契約や組織づくりについても新たな課題が見え始めていました。
そんな株式会社エムズと、成長加速マッチングサービスを通じて出会ったのが、中越経営法律事務所です。ただし、エムズの荻野様は、最初から弁護士を探していたわけではありません。一方、中越様も、単に契約書をチェックするためにエムズへ声をかけたわけではありませんでした。
二者の出会いから見えてきたのは、トラブルが発生してから対処するだけではない、企業の成長そのものに法務が伴走する「予防法務」という考え方でした。

インタビュイー紹介

株式会社エムズ 代表取締役 荻野 光教 様

株式会社エムズ

2004年設立。看板・サインの企画・設計・製作・施工・メンテナンスを一貫して手掛けるほか、テーマパークや商業施設のイルミネーション施工など、空間演出事業も展開。自社工場と培ってきた技術力を強みに、事業領域を広げながら成長を続けている。

中越経営法律事務所 代表弁護士 中越 琢人 様

中越経営法律事務所

中小企業法務を中心に、事業承継・M&A・経営相談など、企業経営に関わる幅広い支援を行う。「中小企業にも法務部を。」を掲げ、企業や取引の実態を継続的に理解しながら、問題が表面化する前にリスクを整理する“予防法務”に取り組んでいる。

目次

  1. 「個人事業主の延長」では、もう会社を守れない
  2. 弁護士探しではなく、「会社を成長させる方法」を探していた
  3. 支援者から見えたのは、「法務に困っている会社」ではなく「これから伸びる会社」
  4. 「顧問弁護士って、何をお願いできるんだろう」
  5. 法律を見る前に、「会社を見る」
  6. 法務は「止めるブレーキ」ではなく、走り続けるためのブレーキ
  7. 「先生がいてくれてよかった」――事故対応で見えた、顧問契約の意味
  8. 顧問弁護士の価値は、「トラブル対応」だけでは終わらない
  9. 「法務を整えること」が、会社の信用にもなる
  10. 課題が明確になる前だからこそ、支援者との出会いに意味がある
  11. 成長加速マッチングサービスがつないだのは、「相談先」ではなく「会社の一員のような存在」
  12. 成長加速マッチングサービス「セカマチ」とは

「個人事業主の延長」では、もう会社を守れない

― まず、現在のエムズ様について教えてください。
荻野様:
私は20代の頃に会社を立ち上げ、もともとは自分で技術を身につけ、知識を増やしながら仕事を広げてきました。
今は社員も15〜16名ほどになり、お客様も上場企業や大手企業が増えています。事業規模としても、もう個人事業主の延長という感覚ではありません。
看板やサインだけでなく、テーマパークのイルミネーション施工などにも仕事が広がってきました。
そうやって会社が大きくなる中で、自分一人の判断だけではいけない場面も増えてきたんです。
― 特に、どのような部分でしょうか。
荻野様:
一つは契約ですね。
昔は契約書を自分で読んで、分からないところがあれば行政書士さんや社労士さんへ相談するという形でやっていました。
ただ、大手企業との取引が増えるにつれて、契約内容も簡単ではなくなってきました。
以前、ある大手企業との仕事で契約書を確認した時に、「何か起きたら、ほとんどこちら側が責任を負う内容ではないか」と感じたことがあります。
大手企業には当然、契約書をつくる専門家がいます。一方で、こちらは法務の専門家がいない。
でも下請けの立場では、「この条項は変えてほしい」と簡単には言えない。
そういう経験は以前からありました。
会社が小さいうちは自分が判断すればよかったのですが、社員を預かる立場になれば、社員も会社の資産も守らなければいけない。
そこで、弁護士という存在が必要になってきているとは感じていました。

弁護士探しではなく、「会社を成長させる方法」を探していた

― そのタイミングで、成長加速マッチングサービスへ登録されたのでしょうか。
荻野様:
そうですね。ただ、最初から弁護士を探すために登録したわけではないんです。
当時は大型の設備投資をしていて、補助金について調べたり、GビズIDやセキュリティ・アクションなど、中小企業向けのいろいろな制度を見ていました。
その流れで成長加速マッチングサービスを知った、というのが実際のところです。自分たちのような会社がこれからどう成長していけばいいのか、まだ模索している時期でもありました。
ですから、「成長加速」という名前そのものに興味を持ったところもありましたね。
― そこで、中越先生からコンタクトが届いた。
荻野様:
はい。契約や法務に対する問題意識はありましたので、本当にタイミングが重なった感じです。メッセージをいただいて、「一度会ってみよう」と思いました。

支援者から見えたのは、「法務に困っている会社」ではなく「これから伸びる会社」

― 中越先生は、最初にエムズ様の情報を見て、どのような印象を持たれましたか。
中越様:
最初から「法務に困っている会社だ」と見えていたわけではありません。むしろ最初の印象は、「これから成長していく会社だな」というものでした。
看板の仕事だけではなく、そこで培った照明や施工の技術を使って、テーマパークのイルミネーションなど、別の領域にも仕事を広げている。一つの分野だけにとどまらず、自社の強みを別の事業へ展開していこうとしている会社だと感じました。
一方で、一般論として、建設や施工に関わる業界では、契約や文書が十分に整備されていないケースもあります。
ですから、これから事業が広がっていけば、どこかで法務面の整備も必要になるだろうとは考えていました。
― 実際に会社を訪問して、印象は変わりましたか。
中越様:
より具体的になりましたね。
荻野社長は、営業も設計もされますし、数字も見て、労務も含めて経営全体を見ていらっしゃいました。
本当にいろいろなことを社長自身が担っている。
会社が成長していく中で、それらをいつまでも一人で抱え続けることはできません。
だから契約書だけではなく、「会社としてどういう体制をつくっていくか」ということも、これから重要になってくる会社だと思いました。

「顧問弁護士って、何をお願いできるんだろう」

― 実際に中越先生と会うまで、顧問弁護士についてどのようなイメージを持っていましたか。
荻野様:
正直、ほとんど分かっていませんでした。
毎月顧問料を支払って、どこまで仕事をお願いできるのか。どういう契約内容なのか。費用はいくらぐらいかかるのか。
すべてが未知でしたね。
弁護士へ相談すること自体にも、少しハードルがありました。
事件や事故など、大きな問題が起きてから相談する人というイメージが強かったですから。
― 実際に会ってみて、その印象は変わりましたか。
荻野様:
変わりました。
中越先生の事務所へ伺った時に、法律の話だけではなく、経営についてもお話しできる方なんだと分かりました。
あとは、人柄も大きかったですね。
弁護士事務所というと、テレビに出てくるような立派な事務所で、スーツ姿の方が大勢いて……という勝手なイメージがありました。
でも実際には、私たちのような中小企業にもきちんと向き合ってくれる方がいる。
そして成長加速マッチングサービスを通じた出会いだったことも、安心材料の一つでした。
そこで、顧問をお願いすることにしました。

法律を見る前に、「会社を見る」

顧問契約後、中越様が最初に行ったことの一つが、エムズの現場を訪れることでした。
契約書を集めて一斉に修正したわけではありません。
まず、どのような仕事をし、どのような取引が行われているのかを知るところから始まりました。
― なぜ、会社そのものを知ることが重要なのでしょうか。
中越様:
私が考える「予防法務」は、決して大企業の法務部がやっているような大それたものではありません。
基本は、その会社の事業を理解することと、取引を理解することです。
その上で、問題が表面化する前に、「このまま進むと、ここで問題になるかもしれない」と気づける状態をつくっておく。
それだけでも、経営者の判断は変わります。
例えば契約交渉でも、後々問題になりそうなポイントを事前に理解していれば、その場での返し方や交渉の仕方が変わってきます。
何かが起きてから法律を当てはめるのではなく、その前から会社の中に法務の視点を持っておく。
それが予防法務だと考えています。

法務は「止めるブレーキ」ではなく、走り続けるためのブレーキ

― 「中小企業にも法務部を。」という考え方も、そこにつながるのでしょうか。
中越様:
そうですね。
法務部というと、事業部から相談を受けて、「これはリスクがあります」「これはできません」と、取引を止める部署のように思われることがあります。
車で例えれば、急ブレーキを踏むようなイメージです。
でも中小企業は、挑戦して伸びていかなければなりません。
だから、いきなり取引を止めるのではなく、普段からコミュニケーションを取りながら、必要な時に軽くブレーキを踏んで、スピードを調整しながら前へ進める状態の方がいい。
私は、それが中小企業に必要な法務だと思っています。
法務部といっても、大人数の専門部署をつくる必要はありません。
社内のバックオフィスを担当する人が、外部の弁護士とやり取りしながら、「先生はこう言っていた」「この場合はここを確認しよう」と少しずつ法務の視点を社内へ取り入れていく。
小さくてもいいから、その機能を会社の中につくっていくことが大切です。

「先生がいてくれてよかった」――事故対応で見えた、顧問契約の意味

そして顧問契約からしばらく経った頃、エムズの現場で事故が発生します。
複数の企業が関係し、保険や当事者、契約関係も複雑に絡む案件でした。
― その時のことを教えてください。
荻野様:
かなり複雑な状況でした。
関係する会社も複数あり、私が何か一つ説明すると、別のところから二つ返ってくるような状態でした。
自分だけで説明し続けると、立場としても難しくなってしまう。
そこで中越先生に入っていただき、保険の適用関係などを整理して、先生の言葉で説明していただきました。
それだけでも、相手の表情や対応が変わるんです。
法律の専門家が客観的な立場から説明するということ、言葉を添えていただくということの重みを、そこで実感しました。
「あの時、先生がいてくれてよかった」と本当に思いましたね。
― 中越先生は、どのように対応されたのでしょうか。
中越様:
事故そのものだけを見るのではなく、まず関係者の権利関係や契約、保険の約款などを整理しました。
法律上の問題と、保険を使った場合の経済的な損得も分けて考える必要がありました。
こういう時に重要なのは、機動力だと思います。
問題が起きてから初めて会社のことを聞くのではなく、それ以前から事業や取引を把握していれば、状況を理解するまでの時間も短くなります。

顧問弁護士の価値は、「トラブル対応」だけでは終わらない

事故対応を経験したことで、荻野様の中で顧問弁護士の意味はより具体的になりました。
しかし、エムズがこれから直面する課題は、契約や事故対応だけではありません。
会社そのものを次の世代へ渡していくことも、大きなテーマになっています。
― 現在、組織づくりについてはどのような課題を感じていますか。
荻野様:
今、若い社員を育てているところです。
私たちの世代は、一人でデザインして、作って、営業して、現場も分かるというように、仕事全体を経験しながら覚えてきました。
でも会社が大きくなると、そうはいきません。
20代、30代の社員には担当する部署を決め、それぞれの仕事に集中してもらっています。
その方が専門性は高まりますが、一方で他の部署の仕事が見えにくくなる。
今は私を含めた創業時に近いメンバーが、その間をつなぐ「橋渡し」をしています。
ただ、それもずっと続けられるわけではありません。
いずれ若い社員が経営にも目を向け、見積もりをつくり、お客様と契約をする立場になります。
その時、本人たちがすべてを経験だけで判断するのは難しい。
だからこそ、中越先生のような専門家が会社のそばにいることは、今後ますます重要になると思っています。

「法務を整えること」が、会社の信用にもなる

荻野様は、顧問弁護士などの専門家がいることを、単なるリスク対策とは考えていません。
― 専門家がいること自体にも、企業としての意味があるのでしょうか。
荻野様:
あると思います。
私たちのような中小企業が、「顧問弁護士がいます」「社労士と連携しています」と言えることは、会社としてきちんとした体制をつくろうとしている証明にもなります。
大手企業や海外企業と仕事をしていくなら、相手は当然、法律や契約について準備しています。
こちらも技術力だけではなく、経営や契約をきちんとマネジメントできる会社にならなければいけない。
そういう意味では、法務を整えること自体が会社の信用や強さにもなると思います。

課題が明確になる前だからこそ、支援者との出会いに意味がある

今回のマッチングを振り返ると、エムズが成長加速マッチングサービスへ登録した時点で、「顧問弁護士を探す」という明確な目的があったわけではありません。
一方、中越様も、「契約書のチェックが必要な企業」を探していたわけではありません。
成長しようとしている企業を見つけ、支援者側から声をかける。
その対話の中で、企業自身が感じていたものの、まだ具体的な解決策に結び付いていなかった課題が見えてきました。
― 成長加速マッチングサービスのような仕組みに、どのような可能性を感じていますか。
中越様:
企業への支援というと、最初に税理士さんとの接点があり、人が増えれば社労士さんが入り、弁護士はかなり後になってからというケースが多いと思います。
ただ、伸びていく途中の中小企業こそ、早い段階で法務の視点が必要です。
弁護士の側にも、単発の契約案件だけではなく、経営相談も含めて長期的に企業と一緒に考えている方はたくさんいます。
そういう支援者と企業が、もっと早く出会えるようになるといいですね。
支援機関に登録している弁護士の方々にも、ぜひ企業へ積極的にコンタクトしてほしいと思っています。

成長加速マッチングサービスがつないだのは、「相談先」ではなく「会社の一員のような存在」

エムズが求めていたのは、契約書を一度チェックしてくれる専門家だけではありませんでした。
事業内容を知り、取引先との関係を知り、経営者がどんな判断をしようとしているかを理解したうえで、必要な時に立ち止まるポイントを教えてくれる存在でした。
そして、その関係は事故への対応だけでなく、次世代への事業承継や、大手・海外企業との取引、企業としての信用づくりへと役割を広げようとしています。
成長加速マッチングサービスへの登録時には、まだ名前のついていなかった課題。
そこへ支援者側から届いた一つのコンタクトをきっかけに、「自社に必要な支援とは何か」が具体化していった。
今回のエムズと中越経営法律事務所の事例は、成長加速マッチングサービスが単に「困っている企業」と「答えを持つ専門家」を結びつけるだけではないことを示しています。
企業自身もまだ気づいていない、次の成長に必要な支援と出会う。
その出会いが、企業の挑戦を支える新しい仕組みになりつつあります。

成長加速マッチングサービス「セカマチ」とは

成長加速マッチングサービス、通称「セカマチ」は、新たな挑戦や成長を目指す事業者と、その課題を支援できる金融機関や認定支援機関などをつなぐオンラインのマッチングサービスです。
事業者が資金調達、事業承継、経営相談などの挑戦課題を登録し、その内容を確認した支援者が面談を申し込みます。事業者が承諾すると、マッチングが成立します。
今回、荻野様がセカマチを知ったのは、大型の設備投資に伴い、補助金や中小企業向けの各種制度を調べていた時期でした。弁護士を探していたわけではありませんが、中越様との面談を通して、課題が明確になり支援につながりました。
自社に必要な支援がまだはっきりしていない段階でも、課題を登録しておくことが、次の一手を見つける手がかりになります。

サービスの仕組み
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