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【山梨信用金庫】古民家民泊から都留市の未来を描く、ひまわり不動産と山梨信用金庫の伴走支援

事業者・支援者インタビュー

公開日:2026/08/20

【山梨信用金庫】古民家民泊から都留市の未来を描く、ひまわり不動産と山梨信用金庫の伴走支援

山梨県都留市で地域密着型の不動産事業を営む有限会社ひまわり不動産は、古民家を活用した宿泊施設を起点に、地域へ新しい人の流れを生み出そうとしています。
その挑戦に関心を持ち、事業計画や資金計画の段階から伴走しているのが山梨信用金庫です。
両者が出会うきっかけとなったのは、中小企業・小規模事業者と支援者をつなぐ「成長加速マッチングサービス」、通称「セカマチ」でした。
今回は、地域への思いを持つ事業者と地域金融機関が出会い、構想を継続可能な事業へと磨いている、現在進行形の取り組みについて伺いました。

インタビュイー紹介

有限会社ひまわり不動産 中野雅基様

有限会社ひまわり不動産

都留文科大学の学生向けアパートの紹介・管理、不動産売買・賃貸仲介、土地の買い取りや自社分譲などを展開。不動産業に加え、シャトレーゼ都留田原店を運営している。 現在は「谷村COMMONS」を運営しながら、空き家や古民家などの地域資源を活用した宿泊・交流拠点を構想している。

山梨信用金庫 谷村支店 支店長 在原様

山梨信用金庫

地域事業者への金融支援に加え、事業計画・資金計画の策定支援、補助金・助成金、観光・宿泊事業に関する情報提供などを行う。 セカマチへの課題掲載をきっかけに、ひまわり不動産との面談を開始した。

目次

  1. 地域に必要とされる会社でありたい
  2. 子どもたちに、この街で働く選択肢を残したい
  3. 不動産を使って、人の流れをつくる
  4. 古民家民泊を、地域の交流拠点へ
  5. 谷村COMMONSから始まる、小さな実践
  6. セカマチへの登録から始まった出会い
  7. 支援したいと思ったのは、地域への熱意
  8. 「東京から近い」だけでは、人は立ち寄らない
  9. 思いを、継続できる事業計画へ
  10. 厳しい意見が、計画を見直すきっかけになった
  11. 資金だけでなく、情報とノウハウでも支援する
  12. セカマチが、人と人との対話を生んだ
  13. 閉まったシャッターを、一つずつ開けていく
  14. 地域事業者が相談できる金融機関でありたい
  15. 成長加速マッチングサービス「セカマチ」とは

地域に必要とされる会社でありたい

― まず、ひまわり不動産の事業について教えてください。
中野様:
父が始めた会社を、現在は二代目として経営しています。主な事業は、都留文科大学の学生向けアパートの紹介・管理や、土地・建物の売買、賃貸仲介です。近年は土地を買い取って、自社で分譲する事業にも取り組んできました。
― 不動産業以外の事業にも取り組まれていますね。
中野様:
シャトレーゼ都留田原店も運営しています。都留市ではケーキ店が少なくなり、地域の方にとって必要な店舗になっています。私たちは、自社だけが利益を得るのではなく、地域にも価値が広がる事業をつくりたいと考えています。
― 目指しているのは、どのような会社でしょうか。
中野様:
単なる「街の不動産屋」ではなく、不動産や空き家、店舗などを活用して、地域に新しい動きを生み出す存在です。地域のローカルプレイヤー、あるいは街づくり会社のような役割を担いたいと思っています。

有限会社ひまわり不動産 中野雅基様
有限会社ひまわり不動産 中野雅基様

子どもたちに、この街で働く選択肢を残したい

― 地域づくりを意識するようになったきっかけを教えてください。
中野様:
最初に考えたのは、自分の子どもに、この街で暮らし、働くという選択肢を残せるかどうかです。今の事業をそのまま続けるだけで、30年後、40年後にも魅力のある会社や地域でいられるのか、疑問を持つようになりました。
― 会社を継いでもらいたいという思いでしょうか。
中野様:
必ず継いでほしいということではありません。ただ、選択肢の一つとして考えられるくらいには、会社や地域の可能性を高めておきたいです。それは自分の子どもだけでなく、地域の若い人たちに対しても同じです。
― 都留市には都留文科大学があります。若者の多い街という印象もあります。
中野様:
学生は多く、都留市の環境を好きだと言ってくれる人もいます。ただ、卒業後に残って働くための選択肢が少ないんです。大学生がいる間は街に若者がいるように見えますが、その多くは4年間で地域を離れていきます。
― 東京に近いことも影響していますか。
中野様:
近いからこそ、「一度東京へ出てみたい」と考える若者は多いと思います。東京で就職し、家庭を持つと、その後に戻ることは難しくなります。地域に残りたい、戻りたいと思える仕事や事業を増やす必要があります。

不動産を使って、人の流れをつくる

― 不動産業を営む中で、地域の変化をどのように感じていますか。
中野様:
人口が減ると、不動産の取引や流動性も下がります。建築費の高騰で、若い世代が家を建てることも難しくなっています。以前のように、土地を分譲すれば売れるという状況ではなくなってきました。
― その状況から、どのような事業が必要だと考えましたか。
中野様:
不動産を売買・仲介するだけでなく、不動産を使って人の流れをつくる必要があると思いました。空き家や古民家を活用し、地域外の人が都留市を訪れる理由をつくる。そこから飲食や交流へ波及させ、本業である不動産事業との親和性をさらに高めていきたいと考えています。

古民家民泊を、地域の交流拠点へ

― 現在構想している古民家活用事業について教えてください。
中野様:
古民家をリノベーションし、宿泊、シェアハウス、飲食、コミュニティスペースなどを組み合わせた施設をつくりたいと考えています。海外の方だけでなく、日本国内の方にも都留市の魅力を知ってもらいたいです。
― 一般的な宿泊施設とは、どのような点が異なりますか。
中野様:
ただ宿泊してもらうだけではなく、都留市の自然や文化、地域の人との交流を体験できる場所にしたいです。宿泊者が周辺の飲食店や地域の施設を訪れることで、地域内の消費にもつなげたいと考えています。
― 宿泊施設単体の収益だけを考えているわけではないのですね。
中野様:
はい。施設を起点に人の流れをつくり、地域全体の飲食や交流の需要につなげることが目的です。さらに、空き家や古民家の新たな活用方法を示すことで、本業である不動産事業との相乗効果も生み出したいと思っています。

谷村COMMONSから始まる、小さな実践

― すでに地域で始めている活動もありますか。
中野様:
現在は「谷村COMMONS」というコミュニティスペースを動かしています。他県の後継者を招いて地域企業を訪問したり、食事をしながら交流したりする機会をつくっています。
― 地域の方が参加できる企画も行っているのでしょうか。
中野様:
古い蔵に残っていた品物を地域の人たちと一緒に出し、蚤の市のような形で販売する活動も行いました。地域の方がお茶を飲んだり、食事をしたりする交流の場としても活用しています。
― 宿泊施設の完成前から、地域との接点をつくっているのですね。
中野様:
一緒に活動してくれる仲間もいるので、まずは今ある場所を活用し、小さな企画から始めています。実際に人が集まり、交流が生まれる様子を見ながら、今後の宿泊・交流拠点のあり方を考えていきたいです。

セカマチへの登録から始まった出会い

― セカマチへ挑戦課題を掲載した経緯を教えてください。
中野様:
最初のきっかけは、補助金申請に関する加点項目としてセカマチへの登録を知ったことでした。当初は仕組みを完全に理解していたわけではなく、課題を公開しておけば誰かが見てくれるかもしれない、という感覚でした。
― 実際にマッチングすることは想定していましたか。
中野様:
正直、あまり想定していませんでした。登録した後に山梨信用金庫さんから連絡をいただき、具体的な面談や支援につながったことは、良い意味で予想外でした。
― 山梨信用金庫では、どのように課題を把握したのでしょうか。
在原様:
本部の担当部署が、セカマチに掲載されたひまわり不動産様の課題を確認し、谷村支店へ情報を共有しました。まず営業担当者が訪問し、その内容を受けて、私も直接お話を伺うことになりました。
― 最初の面談から、どのように支援が進んだのでしょうか。
在原様:
古民家をどのように活用するのか、宿泊事業として何を提供するのか、どの程度の資金が必要なのかなどを伺いました。その後、事業計画や資金計画の資料をもとに、複数回の面談を重ねています。

面談の様子
面談の様子

支援したいと思ったのは、地域への熱意

― 中野様の事業の、どのような点に関心を持ちましたか。
在原様:
インバウンドの増加を背景に民泊を始めたいというだけでなく、都留市を活性化したいという目的が明確でした。海外の方だけでなく、日本国内の方にも都留市の良さを伝えたいという思いがありました。
― 単なる宿泊事業ではないと感じたのですね。
在原様:
多くの人に都留市へ足を運んでもらい、飲食や交流の需要につなげたいという地域への思いが伝わってきました。利益だけを目的とした事業ではなかったからこそ、応援したいと感じました。
― 「行動に移したことにも意味がある」とおっしゃっていました。
在原様:
地域を良くしたいと思っていても、実際に行動へ移すことは簡単ではありません。中野様は事業計画をつくり、古民家の活用に向けて動き始めています。その挑戦自体に、大きな意味があると思います。

「東京から近い」だけでは、人は立ち寄らない

― 都留市の観光について、どのような課題を感じていますか。
在原様:
都留市は東京から近いものの、富士山や河口湖へ向かう際の通過地点になりやすい地域です。「都留市と聞いて何を思い浮かべますか」と聞かれても、具体的なイメージを持つ人は多くありません。
― 一方で、地域には魅力もあるのでしょうか。
在原様:
まだ知られていない自然や文化、街並みがあります。その魅力を国内外へ発信できれば、「都留市へ行きたい」「泊まりたい」という人は増えると思います。宿泊だけでなく、飲食や買い物にも波及します。
― 中野様の取り組みに期待することは何ですか。
在原様:
都留市の魅力を外へ発信し、人を呼び込む役割を担っていただけると期待しています。一つの施設の成功だけではなく、地域全体へ消費や交流が広がる流れをつくってほしいと思っています。

思いを、継続できる事業計画へ

― 面談では、どのような課題が明らかになりましたか。
在原様:
最大の課題は資金面です。古民家のリフォームでは、水回りや空調、安全設備などに多額の費用がかかります。地域への思いがどれだけ強くても、事業として利益を確保できなければ継続できません。
― 地域活性化と収益性は、どのように両立させる必要がありますか。
在原様:
観光需要によって地域が稼げる状態をつくるには、まず中野様の事業自体が稼げるモデルである必要があります。そのため面談では、初期投資の規模や売上見込み、返済計画を中心に確認しています。
― 中野様が作成した計画について、どのような印象を持ちましたか。
在原様:
非常に詳しい資料を用意されており、それによって議論は進みました。一方、金融機関から見ると、理想が先行し、初期投資や返済計画に無理が生じる可能性もありました。
― 金融機関として、融資の実行だけが目的ではないのですね。
在原様:
融資をして終わりではありません。事業を軌道に乗せ、借りた資金を最終的に返済できて初めて、良い支援だったといえます。後から「借りなければよかった」と思われないよう、必要な場面では厳しい意見もお伝えします。

厳しい意見が、計画を見直すきっかけになった

― 山梨信用金庫との面談を経て、事業構想に変化はありましたか。
中野様:
宿泊事業は初めてなので、当初は自分の理想や、やりたいことを中心に計画をつくっていました。面談を通じて、都留市の市場で成立させるには、より現実的な計画が必要だと気づきました。
― 具体的には、どのような見直しを進めていますか。
中野様:
初期投資をできるだけ抑え、実現可能な規模から始める方向へ見直しています。また、宿泊だけに依存せず、飲食や交流事業など、複数の収益を組み合わせることも考えています。
― 厳しい指摘を受けることへの抵抗はありませんでしたか。
中野様:
自分がやりたいことに対して厳しい意見を受ける場面はあります。ただ、資金を借りても事業が回らなければ意味がありません。事業を継続できる土台に乗せるための指摘だと受け止めています。
― 山梨信用金庫との連携について、どのように感じていますか。
中野様:
自分たちだけでは見えなかったリスクや、費用を抑えられる部分、利益を生み出す方法を一緒に考えていただいています。単に資金を貸すだけでなく、事業を共に磨き上げる中で金融機関との確かな相乗効果を実感しています。

資金だけでなく、情報とノウハウでも支援する

― 資金面以外では、どのような支援を考えていますか。
在原様:
当金庫には、観光業や宿泊業を営む取引先も多くあります。そのため、民泊市場の動向や、どのような施設が旅行者に選ばれているのかといった情報を提供できます。
― 施設づくりについて、具体的な提案もありますか。
在原様:
例えば、畳の香りや和室に布団を敷いて寝る体験は、外国人旅行者にとって魅力になる可能性があります。青畳や布団など、日本らしさを感じられる空間も一つの案です。
― 今後の面談では、どのようなことを進めていきますか。
在原様:
事業計画と資金計画をさらに具体化し、課題を一つずつ解決していきます。補助金や助成金の情報提供とあわせて、事業内容に応じた融資プランも検討したいと考えています。

セカマチが、人と人との対話を生んだ

― セカマチを通じて、どのような価値を感じましたか。
在原様:
最も大きかったのは、実際に会って、相手の思いや熱量を感じられたことです。今は相談や手続きもオンラインで完結できる時代ですが、直接話すことで初めて分かることがあります。
― オンラインの情報は、どのような役割を果たしましたか。
在原様:
掲載された文章だけで、中野様の思いをすべて理解できたわけではありません。ただ、その情報が会うきっかけになりました。面談を重ねる中で、「この方を支援したい」と思うようになりました。
― 中野様は、セカマチを利用してどのように感じましたか。
中野様:
登録時は、具体的な支援につながるとは考えていませんでした。実際には資金面だけでなく、事業計画や宿泊事業の考え方についても意見をいただき、自分たちだけでは得られない視点を得られました。
― 今後、さらにどのような支援者とつながりたいですか。
中野様:
観光や街づくり、情報発信、IT・DXなどの専門家ともつながりたいです。施設をつくるだけでなく、自分一人に依存せず運営できる仕組みまで考えていきたいと思っています。

閉まったシャッターを、一つずつ開けていく

― 今後の事業の展望を教えてください。
中野様:
まずは宿泊と交流の拠点を形にし、稼働させることが目標です。その場所を軸に、地域外や海外から人が訪れ、都留市の人たちと交流する流れをつくりたいと思っています。
― 一つの施設から、どのように地域へ広げていきますか。
中野様:
拠点を先行事例として、周辺の商店街へ活動を広げたいです。今はシャッターが閉まっている店舗も多いですが、それを一つずつ開き、人が歩き、立ち止まる商店街にしたいです。
― 目指している都留市の姿とは、どのようなものでしょうか。
中野様:
人口を大きく増やすことだけが目標ではありません。少人数でも活動する人がいて、仕事や消費、交流が生まれる街です。地域の中で継続的に価値を生み出せる「稼げる街」にしていきたいです。

地域事業者が相談できる金融機関でありたい

― 最後に、今後の支援に対する思いを聞かせてください。
在原様:
中野様のように、地域を盛り上げたいという思いを持つ方と一緒に、地域の稼ぐ力や価値の向上に取り組みたいです。金融支援だけでなく、情報提供や人とのつながりも大切にしたいと考えています。
― 今回の挑戦が地域へ与える影響を、どのように考えていますか。
在原様:
中野様の事業が一つの成功事例になれば、「自分も地域で事業を始めたい」という次の挑戦者が現れると思います。宿泊、飲食、空き家活用など、新しい動きが広がるきっかけになることを期待しています。
― 山梨信用金庫として目指す姿を教えてください。
在原様:
地域事業者が何かに挑戦したいとき、困ったときに相談できる相手であり続けたいです。資金を提供するだけではなく、事業者と一緒に課題を整理し、継続できる事業へ育てていくことが地域金融機関の役割だと考えています。

山梨信用金庫 支店長 在原様
山梨信用金庫 支店長 在原様

成長加速マッチングサービス「セカマチ」とは

成長加速マッチングサービス、通称「セカマチ」は、新たな挑戦や成長を目指す事業者と、その課題を支援できる金融機関や認定支援機関などをつなぐオンラインのマッチングサービスです。
事業者が資金調達、事業承継、経営相談などの挑戦課題を登録し、その内容を確認した支援者が面談を申し込みます。事業者が承諾すると、マッチングが成立します。
今回、オンライン上に掲載された挑戦課題が、ひまわり不動産と山梨信用金庫が対話を始めるきっかけになりました。
古民家を活用した宿泊・交流拠点は、まだ構想と準備の途中です。しかし、課題を外へ発信し、支援者と対話を始めたことで、地域への思いは、少しずつ実現可能な事業へと変わり始めています。

セカマチの仕組み
セカマチの仕組み

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