【株式会社カネス製茶】創業60年以上の製茶事業の後継者として。攻めることではなく、守りながら成長することへの挑戦。
公開日:2026/03/12

成長加速マッチングサービスには、事業承継に関する登録も増えている。今回は、静岡県島田市で創業68年目を迎えたカネス製茶の後継者として事業に向き合う小松元気氏に取材した。新ブランドである「IBUKI bottled tea」の開発や事業承継者としての課題解決にも立ち向かう小松氏に、事業承継における挑戦と課題について聞いた。
インタビュイー紹介
事業者紹介:株式会社カネス製茶 取締役 小松 元気 氏
株式会社カネス製茶静岡県島田市で創業68年を迎える老舗製茶メーカー。熟練の技術を継承しつつ、次世代を見据えた「経営の近代化」を推進しています。最高級ブランド『IBUKI bottled tea』の展開や、職人の勘を数値化・言語化する組織改革に注力。伝統を守るだけでなく、未来へ繋ぐ持続可能な組織への進化を追求し続けている。
目次
新規事業「IBUKI bottled tea」で、日本茶の新たな可能性を拓く
家業に戻った小松氏は、早々に新しいブランド作りへ取り組んだ。日本茶の新たな可能性を提示するボトリングティーブランド「IBUKI bottled tea」である。
「新しいお茶の楽しみ方への需要の高まっており、マーケットインの余地がありました。それに、カネス製茶を生産者ではなくメーカーとして自社の強みや存在感を市場に伝えていくことも目的にブランドを立ち上げました」と語る小松氏。
メーカーとしてマーケットに寄り添いながらも、品質に対する市場の信頼も獲得する。国内だけでなく海外市場も視野に入れた挑戦は、社内に新たな風を吹き込むきっかけとなった。
「静岡県でお茶に関わる事業はたくさんあります。創業100年の歴史あることは日常的で、プレイヤーも多い中で自分達らしさは重要と考えています」

歴史の中にあった「なんとなくの強み」の明文化
カネス製茶には、長年培われた製茶技術や品質への信頼がある。しかし、小松氏は暗黙知として蓄積された「なんとなくの強み」を明文化することにも取り組んでいる。
「創業68年目となり、何をもって半世紀以上やってきたのか棚卸しもしました。そうすると、味づくりや品質の担保、お客様への誠実さといったマインドセットの部分が特徴でした。茶葉の原料はもちろん、水質や抽出方法、加熱殺菌をしないとか。妥協しないメーカーとしての強みを自社の特徴としてアピールする必要を感じました」
新ブランドだけでなく、HPリニューアルなど外部からの見え方も変えてきた小松氏。最大の挑戦について伺うと、その目線は社内に対して向けられていた。
最大の挑戦は社内の体制構築
新しい取り組みを進めるほど、これまで守ってきたものの重さが浮き彫りになる。そこにはベンチャー事業の創業とは異なる視点があると、小松氏は語ります。
「社内みんなで事業をやっていくための体制構築という現在進行系の挑戦ですが、非常に重要かつ難易度が高いと思っています。インナーブランディングと新しい事業を加速化させるための支援体制、社内支援体制に挑戦しています」
ベンチャー企業を経験した小松氏は「攻めるより守りの方が消耗する」と語ります。
「ベンチャーのミッションドリブンは共通の理想や思想を持つメンバーと、建設的な議論を重ねることができる環境です。歴史ある組織だと、動く前の理解の擦り合わせがないと前に進むことも難しいんです。対話を重ね続けるしかない」
守りを“経営”に変えるための整理
そこで小松氏が着手したのが、徹底した言語化と数値化だった。
「MVVみたいなものが特に明文化されていたわけではなかった。世代間もモチベーションも異なるなかで、目線合わせと納得感の醸成を繰り返しています」
会社としてのKGIは何か。そのために追うべきKPIは何か。各商品は利益を生む商品なのか、ブランド価値を担う商品なのか。これまで「なんとなく続けてきた」ものを、一つひとつ分解していく。派手さはないが、体力・精神的にも消耗の大きい作業といいます。
「中期経営計画に落としましょう!と言いながらも、なかなかやりきれてない企業は、事業承継の会社は特に多い気がしています。成功している後継者はそこを皆さんやっている」
攻めが大切か、守りが大切か。客観的な冷静さを持ちながらも、組織に関わる人を見ながらバランスを取り続けることが重要だと小松氏はいいます。

家業を経営に変えるということ
事業承継は単なる世代交代ではない。「守る人」が「決める人」になるプロセスだ。
そのためには感覚を言葉にし、言葉を数字に落とし、数字を共通言語にする。地道だが、それを避けて前に進むことはできない。カネス製茶が向き合っているのは、多くの老舗企業がこれから直面する課題そのものだ。なぜここまでして変えようとするのか。
「この会社を、次の世代に“渡せる形”にしたい」
変えなければ続かない。守るだけでは残らない。静かだが確かな覚悟が小松氏から感じられる。
事業者へのメッセージ
規模感に適して攻めと守りの順番を考えること
「事業承継で既存事業に入っていきながら組織改変をしていくパターンがほとんど。承継後に革新的な事業を前に一気に進めるケースは、事業規模が小さい企業に多い印象です。最初に取り組むべき優先順位は規模感によって左右されるはずです」
事業を継ぐとは、会社を“未来に耐えうる形”に作り直すこと。
その一歩を踏み出した企業だけが、次の世代へと進んでいく。
感覚の経営から、数値で動く組織へ。セカマチで得る客観的な視座
カネス製茶が長年の経験則を言語化し、誰もが判断できる「数値」に落とし込み、経営のOSを刷新したように、組織の壁を越える鍵は社内の「当たり前」を客観視することにあります。
しかし、染み付いた社風や業務プロセスを内部の人間だけで見直し、変革を進めるには限界があります。組織を次のステージへ引き上げるためには、しがらみのない視点を持つ「パートナー」や「外部の知見」が重要です。
中小企業庁の「成長加速マッチングサービス(セカマチ)」であれば、あなたの会社の課題を冷静に分析し、伴走してくれる専門家と出会えます。確かな成長軌道を描くための土台づくりに、ぜひご活用ください。
成長加速マッチングサービスとは?
事業の拡大など新しい挑戦を考えていても、「どこに相談すればいいのか分からない」とい
う悩みを抱える事業者は少なくありません。一方で、企業を支援する専門家にとっても「支
援を必要としている事業者となかなか出会えない」という課題があります。
その両者をつなぐために、中小企業庁が立ち上げたのが成長加速マッチングサービス(通
称:セカマチ) です。
事業者は、セカマチで自社が取り組みたいテーマ(資金調達・事業承継・経営相談)を登録
すると、国が認めた支援者(金融機関や認定支援機関)から相談の申し出をうけることがで
きます。

サービスの役立つポイント
事業者に役立つポイント
●取り組みたいテーマ(挑戦課題)に対して、解決可能な支援者から直接コンタクトを受けられる
●金融機関、投資機関、認定経営革新等支援機関など、国が認めた支援機関のみが登録しているため安心
●情報公開する支援者の範囲を選べるため、希望する支援者に限定してアプローチを受けられる
支援者に役立つポイント
●中小企業庁の運営するサービスで安心
●約40,000社の事業者が登録しており、無料でコンタクト可能
●事業者の財務データや基本情報に加え、事業者の取り組みたいテーマ(挑戦課題)の具体的な内容を確認できる
●市区町村レベルでの事業者検索や、事業者が取り組みたいテーマ(挑戦課題)の種類(資金調達/事業承継/経営相談)の検索が可能で、自身の専門性に合った事業者に出会える
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