【株式会社シンコー】派手な改革ではなく、積み重ねる改善で年商3倍に成長。静かに成長を続ける、二代目経営者の改革と挑戦に迫る。
公開日:2026/01/30

長崎県佐世保市。ここには、国内でも数少ない米軍海軍基地が存在する。株式会社シンコーは、その基地に常時寄港する米軍艦艇の修繕を担う企業だ。塗装や溶接を中心とした修繕事業は、極めてニッチな分野である。市場自体が大きく拡大することはなく、顧客もほぼ限定されている。
それでも同社は、事業承継後に売上を約3倍へと伸ばしてきた。
成長加速マッチングサービスは事業者と支援者を繋ぐプラットフォーム。事業者の数だけ挑戦が存在する。本記事では、株式会社シンコーで代表取締役を務める浦尾氏にインタビューをさせていただいた。
インタビュイー紹介
事業者紹介:株式会社シンコー 代表取締役 浦尾 敬太 氏
株式会社シンコー長崎県佐世保市を拠点に、米海軍や海上自衛隊の艦艇維持を支える「艦艇保全のプロフェッショナル」。空母艦載機の離発着にも耐えうる特殊な滑り止め塗料の輸入・販売から、国際基準(AMPP等)の厳しい品質管理に基づく塗装・修繕工事までを一貫して手掛ける。
目次
米軍艦艇の修繕という、ほとんど知られていない市場。事業を継ぐかは、最後まで迷っていた。
浦尾氏は、最初から家業を継ぐと決めていたわけではない。工業高校を卒業後、父の勧めもありアメリカへ留学。帰国後は東京で就職し、電気メーカーや金属部品商社など、家業とは直接関係のない仕事を経験してきた。
「当時は、地元に戻るかどうか、正直かなり迷っていました」
事業規模はまだ10億円にも満たず、経営も安定しているとは言い難かった。東京での生活を続ける選択肢もあった中で、最後に背中を押したのは、父から聞いた事業の話だった。
「米軍艦艇修繕という特殊な事業だから持つ強み。そして、まだ十分に活かしきれていない伸びしろ。この事業には、まだ可能性があると思えたんです」
その判断が、成長の始まりとなった。

売上3倍の理由は「抜本改革」ではなく「小さな改善の徹底」だった
代表に就任してから、浦尾氏が行ったのは、劇的な改革ではない。
原価管理や財務会計を、紙とエクセル中心の運用からシステムへ移行する。ITツールを導入し、情報を整理する。人材育成や採用の方針を見直したといいます。
「特別なことをやった感覚はありません。できることを、少しずつ整えていっただけです」
その積み重ねによって生産性が向上。一人あたりが対応できる工事量が増えたといいます。市場規模が変わらない中で、自社のシェアが高まり、結果として売上が伸びていったというのだ。
最大の挑戦は、横須賀への進出だった
これまでで最も大変だった挑戦を挙げるなら、横須賀での工事対応だという。
横須賀は、佐世保と並ぶ米軍海軍基地の拠点だが、そこでは競合企業がほぼ市場を独占していた。協力会社も見つからず、資材や設備、人員をすべて長崎から送り込む必要があった。
「工期は厳しく、コストもかかることです。正直、かなり無理のある挑戦だったと思います」
それでも、佐世保の協力会社の支援を受けながら、なんとか工事をやり切ったというのだ。
遠隔拠点での挑戦が、DXの必要性を突きつけた
横須賀での経験は、経営の弱点を浮き彫りにした。
拠点が一つであれば成り立っていた業務フローが、遠隔地では機能しない。勤怠管理、在庫管理、現場状況の把握。すべてが見えづらくなった。
「このままでは、拠点が増えたときに回らない」
そう感じたことが、その後のDX推進につながっていく。横須賀での挑戦は、結果以上に、経営の視点を変える経験となった。
成長を支えたのは「外部」よりも「内部」だった
現在、従業員数は約120名にまで成長。かつて30名ほどだった組織は、着実に拡大してきた。外注していた工程を内製化し、人材を採用・育成する。市場のニーズに合わせて、組織の形を変えていく。
「成長の要因は、外部環境よりも、内部の変化が大きかったと思います」
派手さはないが、組織を足元から作り直すことで、安定した成長が可能になったというのだ。
100億宣言、その先に見据える次の一手
現在の売上規模は約30億円。次に見据えるのは、40億、50億、そしてその先だ。
そのために取り組もうとしているのが、民間向けの金属加工事業である。塗装と溶接、その両方を社内で完結できる強みを活かし、建設機械や産業機械など、より広い市場への展開を構想している。
「これまでに積み重ねてきた技術、ノウハウを活かして新たな市場を切り拓きます。一つの事業に依存しない体制を作っていきたいと考えています」
歴史と地場で培ってきたニッチな技術を、次のフィールドへと広げる段階に入っている。
「挑戦している感覚は、あまりないんです」
自身の歩みを振り返りながら、浦尾氏は淡々と語る。
「仕事そのものが好きなんです。小さな改善が形になって、会社に影響が出るのが楽しい」
挑戦を挑戦として意識していない。その姿勢こそが、継続的な成長を支えてきたのかもしれない。
事業者へのメッセージ
積み重ねることを、楽しめるかどうか
最後に、これから挑戦する事業者へのメッセージを尋ねると、答えはシンプルだった。
「特別なことはしていません。できることを一つずつ、続けてきただけです」
静かに、しかし確実に積み上げてきた言葉には、実感がこもっていた。

成長加速マッチングサービスとは?
事業の拡大など新しい挑戦を考えていても、「どこに相談すればいいのか分からない」という悩みを抱える事業者は少なくありません。一方で、企業を支援する専門家にとっても「支援を必要としている事業者となかなか出会えない」という課題があります。
その両者をつなぐために、中小企業庁が立ち上げたのが成長加速マッチングサービス(通称:セカマチ) です。
事業者は、セカマチで自社が取り組みたいテーマ(資金調達・事業承継・経営相談)を登録すると、国が認めた支援者(金融機関や認定支援機関)から相談の申し出をうけることができます。

サービスの役立つポイント
事業者に役立つポイント
●取り組みたいテーマ(挑戦課題)に対して、解決可能な支援者から直接コンタクトを受けられる
●金融機関、投資機関、認定経営革新等支援機関など、国が認めた支援機関のみが登録しているため安心
●情報公開する支援者の範囲を選べるため、希望する支援者に限定してアプローチを受けられる。
支援者に役立つポイント
●中小企業庁の運営するサービスで安心
●約40,000社の事業者が登録しており、無料でコンタクト可能
●事業者の財務データや基本情報に加え、事業者の取り組みたいテーマ(挑戦課題)の具体的な内容を確認できる
●市区町村レベルでの事業者検索や、事業者が取り組みたいテーマ(挑戦課題)の種類(資金調達/事業承継/経営相談)の検索が可能で、自身の専門性に合った事業者に出会える
記事をシェア
まずはサービスを
利用してみませんか?
※会員登録には、GビズIDが必要です。